ロースターが赤くなる前に
わたしの中で grill solitude が始まった
一人用の席は静かすぎて
体温より先に孤独のほうが温まっていく
肉が焼けるまでの数十秒
思考だけがどこかへ抜け出す
これは waiting heat-drift
店の外の光まで頭が勝手に歩いてく
区切られた壁に視線を向けると
そこに跳ね返ってくるのは
わたしの気配だけ
solo-table echo
存在が淡く揺れ続ける
焼ける速度とわたしの呼吸が合わない
お肉を裏返すより遅い心拍
これが pace mismatch
世界のテンポに今日もうまく乗れない
裏返す瞬間だけ胸が少し痛む
火と音に触れた拍子に
小さな不安が弾ける
timing anxiety flicker
煙の向こうで
知らない日の記憶がぼんやり浮かぶ
わたしじゃない誰かの机と笑い声と
触れたことのない夕方
smoke memory haze
煙はいつも余計なものを連れてくる
ひとりなのに
ひとりのはずなのに
手が止まる瞬間がある
lone-cook hesitation
自由という名の不安
タレを入れるだけなのに
手元の世界がやけに鮮明になる
sauce overfocus
集中したふりをして
考えたくないものから逃げてる
隣の席との距離が
海のように深い
ここは島だ
table-island syndrome
どこにも繋がっていない気がした
食べ終わっても
満たされる感覚が追いつかない
椅子を立つ前に
胸の奥だけがまだ空のままだ
post-meal emptiness lag
わたしは
焼かれた肉よりも先に
今日の孤独を食べきれなかった
……ねえ、ナンパじゃないんだけど
誰にも話しかけられてないなら
これ──読んだ人専用の出口にしていいよ


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